もずくです。
私の推し暗号通貨の一つにEOSがあるのですが、日本語で検索すると、EOSトークン(正確にはERC20 EOSトークン)が無価値であるという情報ばかり出てきます。今日の記事は、そんなことないと私は信じているよ、というお話です。
発端としては、少し前にsolaの私のカードで少し議論が出ていて、そこで私が調べて書いたことをいつかブログにまとめたいなと考えていました。で、たまたま昨日TwitterでEOSのことを呟いたら反応があって、放置していたことを思い出したので一気に記事にしてしまおうと重い腰を上げました。
暗号通貨EOSの概要
まず、EOSのことを全く知らない人もいるかもしれないので、その概要を箇条書きでまとめておきます。
- block.oneという会社がEOSプロジェクトを進めている
- EOSプロジェクトでは、EOS.IOという、第三者(企業とか)が独自のブロックチェーンを使ったアプリケーションをその上に構築することのできるオペレーションシステム(みたいなもの)を開発している
- EOS.IOは、Ethereumネットワークなどに比べてトランザクション(ブロックチェーンを介した取引)の処理が格段に速いなど、企業の使用に耐える能力を備える(予定)
- 企業がEOS.IO上で構築したアプリケーションでは、その利用者がトランザクションの手数料を支払う必要がないため、利用者は無料でそのアプリケーションを利用することもできる(もちろんアプリ開発企業がユーザに独自に課金することは可能)
- EOSトークンは、block.one社がEOS.IOの開発資金を得るために行っているICOのERC20トークンで、2018年6月1日にICOが終了する(約1年間ずっとICOをやっている)
- EOSトークンはERC20トークンなので、取引所でも普通に取引されている
Ethereumを超えるようなすごいものが1年間で完成するの?という疑念はもちろんあるのですが、block.one社のCTOが、BitShares、Steem、delegated PoSなどで有名なDaniel Larimerということで、技術的には大丈夫だろうと考えられているわけです。
Steem上で動いているSteemitを使っている皆さんなら、Danielさんを信頼、できますよね…?
EOSトークンは無価値…?
さて、このEOSトークンがなぜ無価値だと騒がれているかというと、EOS.IOのFAQに次のようなことが書かれているからです。
超意訳すると、EOS.IO上で構築されたアプリケーション(FAQでは"EOS Platform"と表現されています)について、block.one社は関与しないし、それらのアプリケーション上ではEOSトークンは何の権利・用途・機能もありませんよ、と言っているっぽいのです。
ところで、EthereumのETHはなぜ価値があるのでしょう?
それは、Ethereumネットワーク上で動いているアプリケーションのトランザクション(取引)にはGASという手数料がかかり、それが最終的にETHの形でネットワークを運用する貢献者たちの手に渡ります。Ethereumネットワーク上で多くのアプリケーションが動けば、それに合わせてETHも流動するので、ETHの価値が自然と担保されるわけです。
その他の暗号通貨も、それ自体に何かしらの使用目的や株の配当のようなものがあるのが普通です。
ところが、EOSトークンにはそういった使用目的や配当が無いと明言されているのです。というのも、EOSの概要で紹介したとおり、EOS.IOにはトランザクションのための手数料が発生しないからです。block.one社CTOのDanielさんは過去にSteemを作った人ですが、Steemも同様の仕組みで動いている(らしい)ので、私たち利用者は特に手数料を支払わずにSteemitを使えているのです。
考えてみれば、LINEやFacebookといったアプリを使うのに必ず手数料がかかる…というのは嫌ですよね。EOS.IOが企業向けのブロックチェーンプラットフォームだというのは、その高いスケーラビリティだけでなく、こういった部分にもあるように思います。
でも、EOSトークン自体に使用目的がなくても、取引所に上場されていればトレードで価格が上がったり下がったりするわけでしょ? それでもいいやん、誰かがEOSトークンで何かするかもしれないし? という考え方はあるかもしれません。
事実、ほとんどの暗号通貨は、それが実際に使われる場面よりも遥かに高い相場で現在は取引されているように私は思います。
ところが、そこに次の一文がきます。(あ、二文か)
一文目はまあいいとして、問題は二文目です。EOSトークンは、2018年6月1日のICO終了後、23時間以内に凍結されて移動できなくなると書かれているのです。つまり、ICOが終了したら、もう取引所などでトレードができなくなるのです。まさに無価値…というわけですね。
このことは、ICO当時、海外でもやはり話題になったようです。
- What will be the long term value of EOS tokens?
- EOS Token have absolutly "no uses, purpose or value"
- What Are You Buying????
- EOS tokens are useless?!
これらのブログやRedditでのやりとりを読めば私の記事の続きを読む必要は全くないのですが、まあ、私にも自論(=妄想)を語らせてください。
EOSトークンの役割
上に紹介したFAQの5番と19番だけを読んで(もしくはそのコピペだけをどこかで見つけて)騒いでいる人が多いみたいなのですが、EOSトークンには一つだけ役割があります。それはFAQの21番に書かれています。
ちょっと長いのですが、1段落目の後半に、EOSトークンが凍結された後、EOS.IO上で構築したアプリケーションはEthereumブロックチェーン上のEOSトークンの分布をマッピングしたJSONファイルを生成できる、とあります。EOS.IO上で構築されるアプリケーションは、使い道がないはずのEOSトークンの分布情報を取得できるわけです。
なぜそんなことを明記しているのでしょう。それは2段落目にヒントがあると私は思っています。
2段落目の内容を超意訳すると、EOS.IO上で構築したアプリケーションにおいて、その独自トークンを取引可能な状態にするには、全EOSトークンの15%以上からの承認が必要だと書かれています。(※EOSトークン保有者の15%ではなく、承認が得られた保有者の保有量の合計が全トークンの15%以上でなければいけないという意味だと思います。)
シンプルに言い換えれば、EOS.IO上で構築されたアプリケーションを利用開始するには、まず最初に、EOSトークンホルダーにお許しをもらわないといけないということです。
15%以上の承認を得るやり方は色々あると思いますが、一番単純なのは、EOSトークンの保有量に応じて何かしらのインセンティブを与えれば、承認に反対する人はいないでしょう。例えば、そのアプリケーション上で取引される予定のトークンをEOSトークンの保有量に応じて初期配布する…といった感じです。前述の「凍結されたEOSトークンの分布をマッピングしたJSONファイル」はそういう目的で使えるよ、ということを暗に言っているのです。(たぶん)
なお、FAQの5番でEOSトークンに権利・用途・機能がないといっているのは on the EOS Platform、つまり、企業がEOS.IO上で構築したアプリケーション上において…ということです。一度動き出したアプリケーション上ではEOSトークンは価値を持たないけれど、最初にEOS.IOからランチさせるところではEOSトークンは無意味ではないのです。(たぶん)
残る懸念と私の楽観視
というわけで、EOSトークンは無価値ではないと思います。
しかし、無価値になる可能性は大いにありえます。そのことは、先ほどのFAQの21番にも最後にしつこく書かれています。はっきりとは述べられていませんが、全EOSトークンの15%分を持つ保有者の承認を得る方法はいくらでもあるということです。
例えば、いまざっと考えただけでも
- EOS.IO上でアプリケーションを開発する企業が15%のEOSトークンを自社で保有してしまう
- 15%のEOSトークンを保有している個人や団体にだけインセンティブを与えて承認してもらう
- EOSトークンの保有量が多い順に、15%になるところまで保有者にインセンティブを与えて承認してもらう
- インセンティブは何も用意せず、EOSトークン保有者にランダムに承認を求めて15%になるまで続ける(ダイアログが出たら適当にOKを押す人がたくさんいるでしょうし)
というような抜け道があるかと思います。
一つ目はまあいいと思います。その企業のアプリケーションだけの話なので影響は小さいですし。EOS.IOのテストネット上で既にアプリケーションを開発している企業はもう買い集めているかもしれません。
厄介なのは真ん中の二つです。これをされてしまうと、EOSを大量に保有している人以外にはインセンティブが何も与えられない可能性があります。また、最後の方策をとられた場合にはEOSトークンの保有量に関係なく価値がなくなります。
以上のことについて、block.one社は各企業のやり方に一切関与しないと明言しています。つまり、FAQの5番の記述は、各企業が15%承認の部分をうまく切り抜ける方法を見つけ、EOSトークン保有者になんの利益ももたらさなかったときに、block.one社が保有者から詐欺だと訴えられないようにするための防衛策なのだと私は読んでいます。
それでも私は、いまのところ、EOSを推し暗号通貨の一つとして挙げています。
私なりの理由は次のとおりです:
- 前述のような抜け道が使われず、EOSトークンの保有量に応じてインセンティブが与えられる文化がうまく形成された場合、凍結されたEOSトークンは、EOS.IO上でアプリケーションが新たに構築され続けるかぎり金の卵を生み続けるニワトリとなる。
- 前述のような抜け道を使うとEOSトークン保有者から大きな不満が生じてアプリケーションの評判を初っ端から暴落させてしまうので、結局は(多少でいいので)EOSトークンの所有量に応じてインセンティブを与えておいたほうが無難である。
- ICOが終了する2018年6月1日までのEOS.IOの完成度によっては、EOS.IO上でのアプリケーション開発に乗り出すことを遅まきに決める企業が続出し、EOSトークンの価格が終盤に高騰する可能性がある。(その場合、私はEOSを手放しますが)
まあ、承認対価を目的に15%以上を確保している個人やグループの存在が判明して、ICO終了間際に少量保有者がEOSトークンを投げ売りして大暴落、ということも十分あり得ると思いますが…
いずれにせよ、凍結されたEOSトークン保有者がどのような形で承認に加わるのかまだよくわからないので、注意して様子を追いたいと思います。